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<title>★ヨクヨウトンザ★</title>
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<description>この物語にの登場人物の名前と登場するバンド名は偽名で書かれています。セリフや、細かい描写は、「確かこの時、こんな事言ってたな」程度の記憶で書いております。ですので、登場人物のみなさん、「俺、こんな事言ってない」みたいなクレームは勘弁してください。暖かい目でロックミー☆ちなみに「ヨクヨウトンザ」ってどんな意味？辞書
⇒これまでの登場人物の紹介&amp;目次★☆
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<title>第34話　沖縄 占領下の夜</title>
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<description>ドナという新しいメンバーを加えて、僕らのバンドは心機一転生まれ変わった。そして、...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;ドナという新しいメンバーを加えて、僕らのバンドは心機一転生まれ変わった。そして、9月の終わり頃、地元のライブハウスのユーコトロピアでその姿を初めて披露した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その数日後に僕は高校の修学旅行で沖縄へと旅立った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;いや、無事、沖縄に「旅立つことができた」と言うべきだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;話は、あの日の御茶ノ水の夜にさかのぼる。ドナが始めてサピエンスのライブを見に来てくれた日だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ライブの打ち上げをした居酒屋で、ドナは「沖縄に憧れている。いつか行ってみたい」と言っていた。そこで僕は是非、沖縄に行って、ドナにたくさんのお土産話と、沖縄の写真をプレゼントしようと決めたのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;しかし、修学旅行で沖縄に行くには生徒投票でもう一つの候補地、北海道に勝たなくてはいけなかった。修学旅行の行き先を生徒の投票で決めるなんて青地高校独特の変な制度だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は全部のクラスを回って聞き込みをし事前調査をした。その結果に僕はあせっていた。北海道に行きたいという奴らが思っていたより多数いたのだ。その数、ちょうと全学年の半分くらいだった。事実、僕もドナの話を聞くまでは北海道派だった。うにやイクラやカニやジャガイモなどのグルメや、アホみたいに自生していると噂の道産子大麻、ムツゴロウ王国で馬にも乗りたかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;しかし、ドナの為にも、というより自分自身のためにも修学旅行には沖縄に行かなくてはならなかった。今のまま生徒投票を行えば、修学旅行の行き先は北海道になるかもしれない。僕は悩んだ。どうすれば北海道派を沖縄派に変えるか。２年生の生徒の数はだいたい200人ちょいで、その半分の100人くらいが北海道派だった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そこで思いついたのが、北海道に関する悪い噂を流すことにした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;まず僕の身近な奴から噂を流し、倍々ゲームで北海道の悪い噂を全学年に広めることにした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おい、タイラ、タイラ」僕が最初に狙った北海道派はタイラだ。タイラは学年の人気者だし、何よりも彼はお喋りだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おい、タイラ、タイラ、もし、修学旅行が北海道になったら最悪だぞ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？なんで？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「イクラやカニってものスッゲー高いらしいぞ。とてもじゃないけど金がもたねえよ。それに俺達みたいな観光客が買えるのは全部ロシア産だって」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？そうなの？安いだろ、東京より。それにロシア産って。嘘だろそりゃ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「アホか、そんな事も知らんのか？俺のオヤジの実家は北海道なんだよ。地元人知らない事実なんだ。観光客にはボッタくるんだ。しかもロシア産をね。なんていうか、アイヌ人ってそういう民族なんだって」もちろん嘘だ。だいたい、僕のオヤジの実家は静岡だ。僕は続けた「それにお前、北海度には大麻が自生してるって思ってるだろ？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あぁ、有名じゃん。みんなで大麻刈りに行って、パーティーしようぜ！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「はぁぁ・・」僕は首を横に振ってため息をついてみせた。「お前は大麻をわかってない。大麻を刈ったところで、それを吸えるまで何日乾燥させなきゃいけないと思ってるんだ？１ヶ月だぞ。１ヶ月。すぐに吸えるわけじゃないんだ。乾燥させてない大麻なんて効果は無いし、肺をやられる」これは本当だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「へ～、そうなんだ。じゃぁ、持って帰るしかないな」とタイラは残念そうに言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「持って帰る？どこに？東京にか？おい、タイラ何言ってるんだ。冷静に考えろよ。そういう考えの奴が北海道で大麻を刈って、持って帰ろうとして年間何人がパクられてると思ってるんだ？北海道のサツもバカじゃねよ。まあ、フェリーで持って帰るなら話は別だが、俺達は飛行機に乗るんだぜ。タイラは飛行機に乗ったことあるか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ない。俺は最高で京都までしか行ったことが無いんだ。飛行機は乗ったこと無い・・」とタイラは言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いいか、空港ではX線やら麻薬犬やらで乗客の荷物なんてぜ～んぶ見られるんだ。飛行機で大麻を持って帰るなんて無理だ。つまりどういうことか。北海道に行けば大麻を自由に手に入れるなんて無理だって事だ。」僕はさらに続けた「それにムツゴロウ王国なんてただの牧場だ。マザー牧場以下だ。日本ガッカリスポットの上位だ。あんなとこ行ってもちっとも楽しくないよ。それにムツゴロウは東京住まいだっていうしさ。」ムツゴロウ王国がガッカリスポットかどうかは知らないが、ムツゴロウが普段は東京に住んでいるというのは本当だ。そして僕はトドメをさすように言った「夏の北海道はいいかもしれない、でも俺達が行くのはいつだ？10月の終わり、11月の始まりだぞ。クソ寒いぜ。外で遊ぶなんてまさに地獄だぞ。みんなバスやホテルから出たがらない。そこで、あぁ沖縄に投票しとけばよかった～なんて思ってももう遅い。沖縄はどうか、10月でも、いや11月でも沖縄ではまだ夏だ。全然海に入れる。トロピカルだぞ～。どこまでも青い空、エメラルドグリーンのサンゴの海。耳をすませばどこからともなく聞こえてくる三線の音、採れたてのマンゴー、街に出ればMAXやスピードのような沖縄美人がウジャウジャいて、米兵から大麻も買える、今すぐに吸える大麻だ、それに沖縄にか花粉はない。北海道のように風邪をひくこともない。」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おい、まっすぅ、そりゃ、どこをどうとっても沖縄の方がいいな」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「当たり前だ。地獄に行くか、楽園に行くか。答えは簡単だ。でもそんな簡単なことをわかってない奴が多すぎる。悲しいことだと思わないか？タイラ、今度の投票までにできるだけ多くの奴に、沖縄に投票するべきかを教えてあげようじゃないか」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そうだな。北海道に行くことになったら大変だ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;タイラが純粋で、しかもみんなの人気者で、ペラペラ何でも言うお喋りでよかった。タイラのおかげですぐに学年中の意見が「沖縄に行こう」という雰囲気に変わった。伝達途中で僕のところにも「まっすぅ、今度の投票は沖縄にしたほうがいいぜ」なんて意見が飛んできた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;この時点で夏休み前の生徒投票の結果はわかっていた。沖縄は北海道に勝ったのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕はインスタントカメラを４個持って、沖縄へ降り立った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;沖縄は予想以上に楽園だった。ドナが憧れる気持ちもわかるような気がした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;しかし沖縄二日目の夜に、僕はある敗北感を味わうことになった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;二日目の夜、僕と、学年リーダの金田と、親友のナオヤと、ジャンキーの高林と、モデル美人のカヤと、ギャルの小野ちゃんの６人は教師のすきをついて、宿舎のホテルを抜け出した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そしてホテル近くのレンタルバイク屋で原付を4台レンタルした。免許を持っていないカヤは金田の後ろに、小野ちゃんはナオヤの後ろに乗って、僕らは夜の沖縄の街を走った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;この時期でも沖縄ではTシャツと短パンでも全然暖かかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;みんな「フォー！」なんて雄たけびを上げながら、本当に気持ちが良かった。僕らは自由をかみ締めた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ただ一つ、僕が不満だったのは、僕の後ろに学年一美人のカヤが乗っていなかったくらいだ。カヤは恋人のタッチャンを事故で失ってから、ずっと精神をやられていたが、その間ずっと金田は励ましのメールを送ったりしてカヤを元気付けていた。そうしているうちにいつしかカヤの心は金田に向かっていたのだ。カヤは金田の腰に腕をまわし、本当に幸せそうな顔をしていた。僕はなんだかんだ言って、カヤの幸せそうな顔を見ると「あぁ、元気になって本当によかったな」と心から思えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ホテルのあった那覇から国道58号線を北上していくと、いつしか沖縄的な雰囲気の町並みからアメリカ的な町並みへと変わった。嘉手納に着いたのだ。嘉手納といえばアジア最大の米空軍基地がある所だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;夜で暗くてよく見えなかったが、どこまでも続く鉄格子と、そのなかの米軍基地がうっすら見えた。その中の飛行機は旅客機ではなかった。戦闘機だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;みんな「わぁ、かっこいい～」なんて言って声を上げた。僕も目を輝かせて米軍基地を眺めていた。この時はまだ、そこがテーマパークくらいの感覚にしか思っていなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;基地の向かいの通りに、小さい日の丸とでかい星条旗が飾られネオンが綺麗に輝くバーを見つけた。「飲んでこう」とナオヤが言ってみんな賛成した。僕はどうせ酒は飲めないし、いつまでも米軍基地を眺めてたかったが、シブシブみんなとそのバーへと行った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;バーの扉を開けた瞬間、みんなの足が一瞬止まった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;狭いその店内はアメリカ人であふれていた。あるものは迷彩服を着ている。当然だがみんな嘉手納の米軍兵だ。そこは米軍兵ご用達のバーだったみたいで、「なんか場違いじゃない？」とカヤが言って「他のとこ行こうか」と小野ちゃんが言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「なんでだよ、いいじゃんここで」と金田が言って、奥にいた日本人のマスターに「あいてる？」なんて聞いていた。金田は常に堂々としている。僕も、一度入りかけて、出て行くのは嫌だった。ここは日本だ、日本人の俺達がアメリカ人に遠慮するなんてシャクだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「適当なとこにどうぞ～」と日本人の店員が言って、僕らは席に着いた。何人かの米兵は僕らをジロジロみたが、ほとんどは気にもしてないようだった。観光客が紛れ込むことは珍しくないのだろう。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;メニューは英語で書いてあったし、金額には円のほか、ドルでも表示されていた。英語の得意な金田は皆にメニューに何が書かれているか説明していた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;せっかくの金田の説明もむなしく、みんなはビールで、僕はコーラを注文した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「何か映画の中にでてくるみたいなとこだね」とカヤが興奮気味に言っていた。ナオヤも高林も小野ちゃんも、みんなソワソしながら、このグローバルな雰囲気に興奮していた。その中で金田だけは落ち着いていた。金田は高校生にして何度も海外に行っていたし、外人の友達もたくさんいた。まわりが外人だらけだろうと何とも感じないのだろう。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕はというと、店内に入ってからずっと惨めな気持ちでいた。ここは日本なのに、すっかりアメリカ人に占領されていたことが悔しかった。この店の光景は日本は戦争に負けたんだ、とういう事実を痛感させられた。僕は楽しめなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;店の奥の、ある光景を見て、僕の惨めさは敗北感へと変わった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そこには一人の日本人女性がいた。少し朝黒い顔で、黒髪の美しい女性だった。その女性は黒人の米兵に肩をまわされ、イチャイチャしていた。たくさんのアメリカ人と、そのなかで黒人にイチャつく日本人女性。その光景は、アメリカと日本の関係を象徴しているように見えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;それは戦争の勝者と敗者の関係を僕に実感させた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は声に出さないで呟いた「なんだよ、日本はアメリカの植民地じゃないか・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;日本はアメリカに占領されていたんだとういう当たり前の事を改めて思い知らされた気分だった。日本は長い歴史の中で、一度たりとも、他国に侵略された経験がない。だから、他国に侵略支配されるということがどういう事なのか実感としてわからないし、対応の仕方もわからない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;侍文化の経験から、ただただお上の、つまりアメリカの言われるがまま、その命令に従う事しかできないのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;だからこそ僕はその黒人をにらみ続けた。少し恐かったが、それでも僕は植民地の国民であることが我慢できなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;アメリカがなんだ！っという気持ちと、それでもやっぱりアメリカにはかなわないという諦めが僕の頭の中を支配していた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;アメリカにはエルビス・プレスリーがいる。日本には誰がいる？北島三郎か？ダサい。ダサすぎる。日本には石原裕次郎がいるが、アメリカにはジェームス・ディーンがいるのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;プレスリーは幼き頃、ピアノの上に乗ってダイナミックに賛美歌を歌うある牧師の姿を教会で見て、音楽に目覚めたという。少年、プレスリーにはその牧師はさぞかしかっこよく見えのだろう。それがアメリカだ。日本のお坊さんが木魚に乗って「なんみょうほうれげきょ」とお経を唱えたとしても、そんな光景はアホらしいだけだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;女性に対する価値観一つとってもそれは言える。アメリカでは胸が大きく、ぷっくらとした唇で厚化粧のマリリンモンローの様な女性に男の視線が集まる。日本じゃどうだ？日本を象徴する街、秋葉原ではアニメの中の、ちょっとおドジなか弱いヒロインの女の子なんかがよくお似合いだ。日本なんて、まったくのお笑いじゃないか。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;日本では、貧しく惨めでも、それでも一生懸命に生きるある少女を描いた‘おしん’というテレビドラマが大ヒットしたが、アメリカでは敵をバッタバッタとやっつける無敵のスーパーマンが大ヒットした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;アメリカでは強いものこそ英雄なのだ。アメリカは正義で、アメリカに逆らうものが悪、これがアメリカの価値観だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;日本のそのながい歴史の中で育まれた文化ですら、アメリカのプレスリーやジェームス・ディーンやスーパーマンやマリリンモンローのような強い文化の前では何一つ手も足も出せない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;どうあがいたってアメリカの勝ちなのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;アメリカが日本を守っている。しかし、一方で、アメリカは北海道には一切基地を置いてない。なぜだ？北海道の一つくらい旧ソビエトにくれてやってもいいっていう考えだからだ。アメリカは日本の為に日本を守っているわけじゃない。東アジアの中でのアメリカという存在を守っているのだ。日本人の事なんて屁にも思っちゃいない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;いくら日本の自衛隊が力を付けようとも、それが米軍以上の力になることは、アメリカ支配が続く限りありえない。侵略国家が、植民地に対して自分の国を超えることを許す事などありえないからだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;確かに戦後、日本円は力をつけた。しかし、それはただ日本を惨めな国にしただけだ。日本は円を持ってでなければ世界と話しもできなくなった。日本は外国に通用する真の言葉を持つことができていない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ねぇ、さっきから、なんであの二人をジロジロ見てるの？」小野ちゃんが僕にそう話しかけた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「見てるってか、にらんでんだ。ムカつくんだよ、あれを見てると。っていうか、なんだかスッゲー惨めな気にさせられるよ。そう思わないか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「えぇ？何で、イチャイチャしてるから？いいじゃない、恋愛は自由っつうか、まっすぅがムカつく事じゃなくない？」小野ちゃんがそう言い、カヤが続けた「日本人の女の子が外人にとられるのが嫌なの？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「違う。そんな事じゃないんだ。ここが六本木なら、いくらでもああやってイチャつけばいいさ。ってか俺は別にあの二人にムカついてるんじゃないし。」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;まったく、何もかもが惨めだ。おまけに、小野ちゃんもカヤも、何もわかっちゃいない。いや、むしろその方がいいのかもしれない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕はそのとき目の前で米軍兵に肩をまわされている日本女性を見るまで、他国に侵略されるという事がこんなにも惨めな事なんだと知らなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そもそも、日米戦争なんてとっくの昔にけりがついた事だと思っていた。一つの昔話くらいにしか思ってなかったし、アメリカが日本を侵略しているなんて実感としてこれまでまったく考えもしなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その時、黒人が僕の目線に気付き、こっちをその大きな目でジロっと見た。僕は少しビビり、一瞬目線をそらそうとしたがやめた。目をそらすというのがいかにも今の日本を象徴する行為に思えたからだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;黒人は言葉を発しないで、その太い腕をまっすぐ僕の方に向け指をさした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;アメリカ人のジェスチャーなんて意味がわかんないが、その指さしは「おい、そこのジャップのガキ、ジロジロ見てるとぶっ殺すぞ」という意味だろう。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は黒人を見るのをやめた。そのかわり一度「チッ」と舌打ちをしてやった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そのやりとりに高林が「おい、まっすぅ、何やってんだよ、やめろよ」と小さな声で言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;すでにすっかりビールで酔いかけていたナオヤが冗談混じりに言った「ハハハ、いいじゃないの、おい、まっすぅあいつ殴ってこいよ、そしたらお前英雄になれっぞ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「もぅナオヤ君、へんなこと言わないでよ～」とカヤが言って、「絶対、そんなことしないでね、うちら簡単にボコボコにされちゃうよ」と小野ちゃんがまじめな顔で言った。 &lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ナオヤ同様に、酔っていた金田が言った「まぁ、たとえあいつが俺たちの挑発に乗ったとしたても、まわりが止めるだろうよ、だってあいつら軍人だぜ。そんなくだらねぇもめ事を起こしたいなんて考えないよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;金田にはアメリカ人の友達もいるし、英語も喋れる。どちらかといえばアメリカ人的価値観を一番理解している。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そんな金田に、植民地に住む国民の惨めさをどう考えているのかを聞いてみたかったが、やめた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そんな話題はこの場の空気を悪くするだけだと思ったからだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;今、僕達は沖縄旅行を楽しんでいて、みんなは楽しく酒を飲んでいるのだ。僕が一人、その惨めさと敗北感を噛み殺しいればいいだけだと思った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;会計を済まし、店を出るときに金田が僕に話し掛けた。「なぁ、まっすぅ、あいつらに何か言いたい事あんのか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？」僕は金田の質問の意味がわからなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「だって、お前、すげーあいつらにケチつけたくてしょうがねえって顔、ずーとしてたぜ。米軍兵に直接文句言えるチャンスだぜ。まっすぅ英語できないだろ？俺がかわりに言ってやっからさ」 &lt;/p&gt;

&lt;p&gt;高林が靴の紐を強く結んだ。こいつはなんかあったら一目散に逃げようって考えだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は「そうだなぁ」とニヤっと笑い金田に言った「お前ら、強くてデカイからって、何でもかんでも勝てると思うなよ、と。弱くてちっこいやつがいつも負けると思うなよ、と。アメリカはいつか痛い目にあうぞ、と」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;金田は「OK」と僕に言い、米軍兵に向かって英語を喋りだした。思ってたよりもでかい声だった。金田もそうとう酔っていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;高林はクラウチングスタートの様なポーズをとって今にもダッシュで逃げ出そうとしている。ナオヤはゲラゲラ笑っているし、小野ちゃんとカヤは呆れている。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;金田の発した言葉に、ある者は「ハッハッハ」と笑い声を出し、ある者は口笛を吹いて小馬鹿にしたり、「サヨナ～ラ」と言う者もいたし、シッシッというジェスチャーをする者、馬鹿にして拍手をする者や肩をすぼめて「何ほざいてんだか」と呆れる者。無視する人はいなかった。みんなが何だかのリアクションをとっていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;コミュニケーションとはこういう事なのか。と僕は思った。例えそれが相手をののしる内容であってもだ。金田のような人間は世界のどの国でも通用する。と、僕はその時そう思った。逆に、英語が喋れないばっかりに、言いたいことのひとつも言えない自分はとても弱い存在なのだと実感した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;金田の言葉に店内のみんながリアクションを取ったのが面白かったのか、あろうことか酔っ払いナオヤは「ファッキュー！センキュー！二ガー！二ガー！二ガー！」と叫んでダッシュした。僕も金田もカヤも小野ちゃんもダッシュした。当然のように高林はすでに原付にまたがり、今にも発進しそうな勢いだった。みんな小学生の頃にピンポンダッシュで遊んだときのことを思い出していたに違いない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;みんな「アハハー！」なんて言いながら原付を走らせていたが、僕だけはまだ敗北感と惨めさに支配されていた。「アメリカという他国に侵略されて、なんでみんな何とも感じないんだろうか」と僕は一人ボソボソ言いながら原付を走らせた。それと同時にプレスリーやジェームス・ディーンやスーパーマンやマリリンモンローのような文化を持てるアメリカをうらやましく思った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そんなこんなで、僕の心はすっかりアメリカ文化の強さと、それにどうあがいても勝てない日本文化の弱さと、他国に支配されるということの惨めさをいだいたまま、楽しいはずだった沖縄の修学旅行を終えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「まっすぅ、おかえり、うわ、黒いね！」久しぶりにカラオケスタジオにバイトしに行くとドナがそう言って僕にお帰りと言ってくれた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ハハハ、黒いだろ？楽園でさ、すっかり日焼けしたよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その日、カラオケスタジオにはブーちゃんという邪魔者がいたので、いつものように僕とドナはカラオケルームに入った。そこで僕はできるだけ楽しい思い出だけをドナに話した。アメリカの話なんてしなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;沖縄のそのトロピカルな南国の気候と信じられないくらい綺麗だった海などの風景の話。タコライスという沖縄料理が僕にとって今まで生きてきた中で一番おいしい食べ物だったという話。沖縄のおじぃ、おばぁがかわいらしくてとても親切だったという話。外国語のように聞こえた本場の沖縄方言の話。沖縄人の顔が濃くて、東南アジアの人たちみたいだったという話。サトウキビ狩体験をした話。沖縄の海で妙な色の魚を釣った話。３日目にクリントン大統領も利用した超高級ホテルに泊まった話。そのホテルでスクリュードライバーというカクテルを調子に乗って飲みまくり記憶を失った話。沖縄楽器の三線の音色が素晴らしかったという話。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;沖縄で採った90枚もの大量の写真をドナにあげた。そしてお土産にチンスコウという沖縄のお菓子と、コーレグースという沖縄の唐辛子の調味料と、海人とかかれたTシャツと、星の形をした綺麗な沖縄の砂と、シーサーという沖縄の守り神の置物と、沖縄民謡のCDをドナにあげた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナは素直に感激してくれた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「わたしね、もう、絶対に行くよ、沖縄には、そんな素敵だなんて。それにこんなに素敵なお土産、これ宝物だよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は嬉しかった。沖縄に行けた事そのものより、その話とお土産に目を輝かせてくれたドナを見られたことが何よりも嬉しかったのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナは僕からもらったばかりの沖縄民謡のCDをカラオケルームに流した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「優しい音だね。とてもリラックスする」と言って目を閉じた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ドナ、沖縄に行くときは俺も連れてっておくれよ」僕は沖縄民謡に聞き入っていたドナに言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あたりまえ。一緒に行こうね」とドナが優しく言ってくれた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その日、僕とドナは出会ってから２回目のキスをした。スピーカーから沖縄民謡がのん気に流れていた。その瞬間、一人の日本人の男は、美しい韓国人の女と愛しあえることで、それは誰の支配もうけることもなくて、人を好きになるという事が限りのない自由なのだという事を感じた。そのキスは少しもいやらしいものではなく、まるでアメリカ人のように軽いキスだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;カラオケルームから出て、帰る前にブーちゃんにお土産を渡すのを忘れていたので、僕はブーちゃんのためだけに特別に買ってきたお土産をあげた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕があげたお土産に「増山くん、なにこれは？お菓子？」とブーちゃんは聞いてきたので僕は答えた、「そう、沖縄のビーフジャーキーみたいなもんで、お酒のつまみにいいらしいっすよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そして、いつものようにドナと“幸せ街道100万号線”を通って帰っているときにドナが僕に聞いてきた「ねぇ、福原さんにあげた、あれ、何？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ああ、あれはね、ミミガーっていって、ブタの耳だよ。ブーちゃんにピッタリなお土産だと思ってさ、アハハ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「・・あら・・ひどい・・人は少しお肉ついてなきゃダメだよ。まっすぅは痩せすぎてる」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「うるさいな、パンクスはガリじゃなきゃいけないんだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「誰が決めた？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ロットンやシドがそう決めたの。ドナだってガリじゃないか」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「違うわよ。私はマリリンモンローのようにグラマラスになりたいもの」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あっそう。でも俺はスーパーマンみたいにマッチョにはなりたくないさ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「誰もスーパーマンの話なんかしてない・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「マリリンモンローっていったらスーパーマンさ。あと、プレスリーね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「・・・まっすぅ、いったいなに言ってる？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「さあなんだろうね。あ、プレスリーはさ、ドーナツ食いすぎて死んだんだ。まったくアホでマヌケだよな」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？まっすぅ、プレスリー大好きでしょ？嫌いなの？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「大好きに決まってんじゃないか。大好きだからこそ、ちょっと悔しくて、惨めで・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ハハハ、さっきから何言ってるか、全然わかりませんよ。ハハハ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ハハハ、ファッキュー！センキュー！二ガー！二ガー！二ガーだ！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、第35話に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-12-21T16:23:49+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/33_e6aa.html">
<title>第33話　運命</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/33_e6aa.html</link>
<description>♪死～んだら地獄で夢をみる～ Oh!サピエンス サピエンス サピエェェンス♪ 僕...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;♪死～んだら地獄で夢をみる～&amp;nbsp; Oh!サピエンス サピエンス サピエェェンス♪&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕らのバンド、サピエンスはドナがベースで加わり、杉山がドラムでカムバックし、ナオヤがエフェクターをあまり使わなくなった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;簡単に言ってしまえばベースがカズノリからドナに変わった、ただそれだけの変化なのだが、僕はまるで初めてバンドを組んだかのような、そんな新鮮な気分でいた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その日、生まれ変わったバンドはスタジオREDで、僕が高校1年生のとき初めてバンドで使える曲として作った『ザ・サピエンス』という曲を練習していた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;♪死～んだら地獄で夢をみる～&amp;nbsp; Oh!サピエンス サピエンス サピエェェンス ブルースの夜に咲く～ ブルースの夜に咲くぅぅ♪&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナのベースはカズノリの作ったベースラインをまったく同じに弾いているのに、カズノリが弾くのとでは違う音に聞こえる。ドナの使っているベースと、カズノリが使っていたベースは、細かいデザインやモデルは少し違うものの、二人とも同じフェンダーのジャズベースだ。おそらく、カズノリの使っていたベースをそのままドナが使い、同じラインを弾いたとしても、その音はやっぱり違って聞こえるだろう。僕はドナの弾くベースにすっかりホレていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;『ザ・サピエンス』この曲のサビの♪サピエンス サピエンス サピエェェンス♪という部分で、いつもならナオヤがハモるのだが、この曲を3回程練習したとこで、そこをドナにハモらせてみた。それはナオヤの提案だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕の歌声はトゲトゲしていて、なおかつ、あまり透らないという最悪なものなのだが、ナオヤのハモりも僕の歌声のそれと似ていて、そんな二人の声が交ざると、何とも耳障りなものに思えていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ならば、そこにドナの丸くて透る声でハモりを入れてみては？という冒険的な試みは見事な程に大成功だった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;♪死～んだら地獄で夢をみる～&amp;nbsp; Oh!サピエンス サピエンス サピエェェンス ブルースの夜に咲く～ ブルースの夜に咲くぅぅ ミカンは腐る～ オレらはロックンロールを殺さないぃぃ Oh!サピエンス サピエンス サピエェェンス♪&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;3回目のドナハモりバージョンの出来にナオヤは興奮気味に「こりゃいい！こりゃイケてるぞ！」と言っていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;それを聞いてドナが「イケテル？どこに行けてると言っている？」と小さな声で僕に言ってきたので、「ドナは日本語をちょっとわからないくらいのほうがカワイイよ」と少しからかい気味に言った。「えぇ～、まっすぅ、何です？それ」とドナが僕の肩を突いた。「何でもないよ、このプリティーウーマンさん、よっ韓国のジュリア・ロバーツ」！」と、僕はドナの肩を突いた。「え、あたし、ジュリア・ロバーツ？じゃ、まっすぅはリチャード・ギアかしら？」「うふふ、俺はプリティーウーマンを歌うジェームズ・ニュートン・ハワードだぜ。さあ、杉山、カウントくれ！歌うぞ、プリティーウーマンを！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;と僕が後ろを振り向いたら、そこにはシラけた顔で僕らを見ていたナオヤと杉山がいた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あのなぁ、お前たち、わけのかわんないイチャイチャはよそでやってくれよ、ここはバンドの練習をするとこですぅ！」と、バンドリーダーのナオヤが言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「何でもいいけど、ドナさん、まっすぅは全然リチャード・ギアじゃねえぞ！」とリチャード・ギアファンの杉山が言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「イチャイチャってどういう意味？」とドナが真面目な顔でナオヤにその日本語の意味を聞いたので、ナオヤは言った「・・・さぁ、さぁ、次の曲やろ！ライブまであと1ヵ月だ！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナがメンバーに加入したことで、僕は浮かれていたが、ナオヤの適切な仕切りで、ゆっくりだが確実に、これまでになく楽しく幸せにバンドは成長していった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;こうして僕の高校生活２回目の夏休みは終わった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;まだまだ暑さの残る９月の終わりごろ、生まれ変わったバンドでの初ライブを、地元、ユーコトロピアで決行した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;本番前にドナは少し笑い僕に言った「まさか、私が日本でライブするなんて、思わなかったよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「きっと、そういう運命だったんだよ」と、僕はドナに言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;初めてステージに上がったドナは、まさにそれをするのが運命だったかのように、堂々と、そしてずっとニコニコしながら楽しそうにベースを弾いていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ダサい男３人の中でドナだけが一際その存在をキラキラと輝かせた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ライブが終わり、ドナはいつもより興奮気味のテンションでにナオヤにこう言ってた。「みんな、チョ～イケテタネ！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/__d568.html&quot;&gt;第34話　沖縄 占領下の夜&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-12-14T09:16:38+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_03eb.html">
<title>第32話　吉野屋北千住店にて</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_03eb.html</link>
<description>「それで、それで、まっすぅはオサダ君に何て言われたの？」 杉山のでかい声が千住駅...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;「それで、それで、まっすぅはオサダ君に何て言われたの？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;杉山のでかい声が千住駅前の吉野家の中で響いていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「俺はね、お前は歌ってるんじゃない、叫んでるだけだぁって言われたよ。あと、サビを盛り上げるようにぃとかさ、ほんと、あいつ何様だってんだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕とナオヤとドナは先日のオサダの愚痴を杉山にこぼしていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ははは、いや、それ的確かもよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;オサダがそう言って吉野家の味噌汁を飲んだ。杉山はかなりの猫舌で、たいして熱くもないその味噌汁を口に運ぶたびにいちいち「ッアチ」と言う。「ッアチ」と言えば熱くなくなるとでも思っているのだろうか。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「それで、ナオヤはエフェクター持ってかなくて怒られてたしね」僕がそう言うとナオヤはイライラした表情で杉山に愚痴をこぼした「エフェクター使うようなギターリストほどショボイんだよ。俺は逆にもう一生エフェクター使いまいって思ったね。あいつはクソだよ。クソ。馬糞だよ。バフン」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ナオヤはそう言って僕のカレーを横から箸ですくって勝手に食べた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おい、ナオヤ、俺がカレー食ってる時にフンの話をするな、ていうか俺のフンを勝手に食うな、俺のフン・・じゃなくて俺のカレーを食うな、フンの話は止めろ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「吉野家で牛丼以外のものを食べるお前がおかしい。俺はおかしくない。オサダはおかしい。俺はおかしくない・・」ナオヤはブツブツとわけのわからない事を独り言のように言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ずっと黙っていたドナが「あの人、みたことある・・」と言って僕らの前で牛丼を食べていた少年を見た。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そいつは僕らと同じくらいの年齢のかなり美系で、となりに座っている偉そうなメガネをかけた大人と楽しそうに話をしていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あぁ、見たことあるな、だれだっけあいつ・・・」ナオヤがそう言うと僕も見たことがあるような気がして、彼が誰なのかを思い出そうとした。すると杉山が言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あぁ、あれはジャニーズのナントカって奴だよ。ほら今、金八に出てる」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あぁ、そうだそうだ」僕とナオヤが大きな声をだした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３年B組金八先生という20年以上続く人気シリーズのドラマの撮影は昔から僕らの地元、足立区で行われていた。舞台となっている桜中学校は、杉山の母校でもある足立区立第二中学校だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「明彦だ。明彦。」とドナが言った。「足立区が写るから、私、たまに見る。退屈なドラマね」と続けてドナがさり気なく毒を吐いた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;明彦役のその少年と隣に座っているメガネの男は、僕らが騒ぎ出したので、食べていた牛丼を残し、席を立とうとしていた。それを見たドナがあろうことか、声を荒げて、２人にこう言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おい、そこの二人、牛丼がまだ残っているでしょ！最後まで食べてから店を出なさい。私の国の隣の国では、牛肉やお米を食べたくても食べれないの！そんないい加減なゼイタク、ダメ！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;二人は氷付いたように一瞬固まった。凍りついたのは二人だけじゃなく、店内にいたサラリーマン達と、店員と、僕ら３人も呆然としてしまった。日本語を流暢に話せるようになってからドナは母親のように誰かをよく注意するようになった。しかしドナの言葉には説得力があり、誰もがを納得させてしまう力があった。その力は絶大で、一度、席を立とうとした二人をまた再び座らせた。その光景を見て僕とナオヤは笑った。先日のスタジオでオサダに説教したドナを思い出したからだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「まあまあ、ドナさん落ち着いて、あ、そこの二人もすいませんね。。」僕が笑いながらドナと二人にそう言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;メガネの男が席に着き、僕らに向かって一言小さな声で言った「あの、じゃぁ、今はプライベートな時間ですので、なにぶん、静かにしていてもらえませんでしょうか」続けて、少年も僕らに「すいません・・」と言った。いったい、どういう意味のすいませんなのかよくわからなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「すっかり、スター気取りだな。俺達名前も思い出せないって言うのに。かわいそうな奴だよ」ナオヤが小さな声で僕らにそう言った。「だいたい、俺、金八先生ってドラマが気にくわねえんだよな。クソドラマだよ。クソ。フン。バフンドラマじゃ」ナオヤがまだそんなことを言っているとドナがナオヤに注意した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「こら、ナオヤくん、そういうこと言うから、彼らがフユカイになるんだよ。」&lt;br /&gt;「・・ハイ、ドナさん、すいません」ナオヤが少ししょんぼりして、僕のカレーを横から箸ですくって勝手に食べた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おい！てめぇ、フン食いたきゃ・・・じゃない、カレー食いたきゃ自分で注文しろよ！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ナオヤは期待通りのリアクションをとった僕にハハハと下品な声で笑った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ドナさん、ナオヤはこんな事言ってるけど、実はこいつ金八を毎週欠かさず見てんだぜ」杉山がそう言うとナオヤは少し顔を赤くして言った&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「違うよ！俺はドラマを見てるんじゃない。近所の堀切駅がよく登場するからそれを見てるんだよ！俺の愛する堀切を！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;アハハとドナが笑った。ドナの笑いを見て、僕も実は毎週金八を見ているなんて事を言うのをやめた。足立区人には不評のそのドラマも、実は皆こっそり見ているのだ。みんな地元が全国ドラマに写るのを楽しく見ているに違いなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;金八の明彦役のジャニーズ少年を発見してから話題がそれたことをナオヤが思い出し、こう言った。&lt;br /&gt;「いや、もう、金八とか明彦とか、どうでもいいんだよ。今日俺が言いたいことは、９月の終わり、修学旅行前に、ユーコトロピアでライブをしようということだ。明日にでもジェリーに出演の交渉をしてこようと思うんだけど、いいね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いいけど、メンバーはどうすんだ？」僕がナオヤにそう聞いた。&lt;br /&gt;「メンバーならここに全員いるだろがい」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ナオヤのその言葉に驚いたのは杉山とドナだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナはサポートだし、杉山はナオヤの仲介でフォーティーファイブというハードコア系の大学生バンドに加入したばかりだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「頼む、杉山、俺が移籍させといてスッゲー勝手だとは思ってるんだが、戻ってきてくれ！オサダじゃダメなんだ。っていうかお前じゃなきゃアカン！」ナオヤが吉野家のカウンターに手を付いて杉山にそうお願いをした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ああ、いいよ！やろう、やろう」杉山は意外にあっけなく、そう言った。「退屈だったんだよね。あいつら、練習ばかりして、一向にライブする話しないんだ。音楽もつまらんし。サピエンスのが全然楽しいからね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ありがてぇな杉山様！じゃぁ、フォーティーファイブのみんなには俺から話をしとくよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ナオヤがそう言うと杉山は男らしいことを言った。「そんなことすんなよ。やめるのは俺なんだから俺が言うわい」いつもパッとしない杉山が始めてかっこよく見えた瞬間だ。かっこいい杉山はさっきまでチビチビ飲んでいた味噌汁を豪快に一気に飲み干し、いつもの「ッアチ」と言う変わりこう言った。「え～い、ぬるいわい！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ドナはいいの？正式メンバーだよ！サポートじゃなくて、ライブもやるんだよ。デモテープもドナの演奏で録るんだよ。いいの？」僕はドナにそう言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「やりたいよ、でも、だったらカズノリくんでいいんじゃないの？」とドナが言った瞬間、僕とナオヤは声を揃えて言った「いやいやいや！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ドナさんみたいな人がメンバーに必要なんだ」とナオヤ。「ドナじゃなきゃヤダ！ドナがやらなかや俺もやらん」と僕。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「う～ん」と一瞬、将来先のことを考えたドナが悩みだした。「ドナさんみたいな美人なベーシスト、日本中探してもいない！」とナオヤ。「アホかナオヤ、世界中探してもいねえよ！っつか銀河系中探してもいない。NASAもビックリだよ！」と僕。ナオヤは渋るドナをおだてただけかもしれないが、僕は本気だった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;しかしドナはそんな言葉に揺らぐような安い女じゃなかった。表情一つ変えずにまだ「う～ん」と悩んでいる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そんな、難しく考えないでよ。俺らだって将来のことなんか考えちゃいないよ。ただ今、現時点で一番楽しくやれるメンバーとやりたいだけなんだ」と横から杉山が良いことを言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そう、そうだ、そうなのよ」と僕が杉山の意見に便乗した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ま、いっか。じゃぁ、やろう」と、ついにドナがメンバー入りを了承した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その瞬間ナオヤは「ありがとう!」と言って、僕は「マンセー！」と叫んだ。急な僕のハングルにドナが笑った。そして僕はもう一度「マンセー！」と叫んだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;店内にいたサラリーマン達と、吉野家の店員と、ジャニーズの少年と、その隣のマネージャーらしきメガネの男が「こいつらいったい何なんだよ？」という目で僕らを見ていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕らが吉野家を出る時、僕はジャニーズの少年に声をかけた。「じゃあな、金八。俺達、実はこっそり毎週見てるからな、ハハハ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おい、まっすぅ、そいつは金八じゃなくて明彦だよ。じゃあな、明彦、お前も出世して早くスマップやトキオみたくなれよ、ハハハ」とナオヤが言って、僕らは吉野家を出た。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;明彦はかなり迷惑そうな顔で「・・どうも」と言い頭を下げた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;店を出て歩きながらナオヤが言った「あいつはダメだな。あそこで、ハイ！頑張ります！って言わなきゃ。何だよ、どうもって」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ハハハ、ナオヤ、あいつはスマップやトキオみたくなれいよ、かわいそうなこと言うなよな、まったく」と僕が言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ま、応援してあげようよ。名前、何ていうんだっけなぁ、ここまで出てるんだけど、鶴とか、亀とかそんなような字が入ってた名前だったんだけど、なんだっけなぁ」と杉山。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いやいや、名前なんて言われても知らねえから、ってかなんでお前そんなジャニーズに詳しいんだよ、気持ちわりいな」とナオヤ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;杉山は、さっきのナオヤのように顔を赤くして言った「違うよ！俺は別にジャニーズに詳しいわけじゃないよ！我が母校が舞台の３年B組金八先生ってドラマに詳しいだけだよ！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;続けて杉山が言った「あ、そうだ思い出した！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「何を？」とドナが聞いた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いや、だからさっきの明彦役の奴の名前、えっとね、亀梨っていうんだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「売れなさそうな名前だな」と僕が笑った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「インパクトない名前だな」とナオヤが笑った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「まぁ、あの顔じゃ売れないわな」と杉山が笑った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「どうでもいいわよ」とドナが笑った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/33_e6aa.html&quot;&gt;第33話　運命&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-12-12T19:32:51+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/31_4bb2.html">
<title>第31話　夏の魔法</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/31_4bb2.html</link>
<description>僕は夏が好きだ。夏は魔法使いだからだ。僕は夏だけに起こる奇跡をいつでも待っている...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;僕は夏が好きだ。夏は魔法使いだからだ。僕は夏だけに起こる奇跡をいつでも待っているのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;綾瀬駅前の裏通りにひっそりとたたずむ小さなビル群の一角に、スタジオREDはある。地元の小さなリハーサルスタジオだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ザ・サピエンスのメンバーも、みんな普段は何でもないただのヤンチャな下町の高校生だが、楽器という名のロックの武器を手にするとき、僕らは変わる。時にそれは学校の汚い部室の中で、時にそれは混沌としたライブハウスの中で、そして時にそれはスタジオREDの中で起きていた。僕はナオヤ、カズノリ、杉山、このいつもの三人といるとき、広い広いこの世界に向かって右手で中指を突き立て「ファックユー！」をして、左手でピースマークを突き立て「ラブ&amp;amp;ピース」と叫ぶことができた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;しかし、8月のこの夜に夏が使った気紛れな魔法は、いつもとは違っていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;この夜、見馴れたスタジオREDの前に集まっていたのは、杉山でもカズノリでもなかった。そこにいたのは新しくドラムで加入することになった元S☆GOのオサダと、カズノリの後釜が決まるまでベースをサポートしてくれることになったドナの二人だった。ナオヤはまだ来ていなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;この日、ほとんど初対面のオサダがいることで、僕は会話に困っていた。ベースケースを背負ったドナもオサダにかける言葉を探しているようにみえた。初めに話し掛けてきたのはオサダの方からだった。「ナオヤくんから君たちの曲のデモテープ聞いて練習してきたよ。いやぁ、久々のバンドだけど、俺もバンド辞めて暇だったからナオヤくんに誘われた時は正直嬉しかったよ。宜しくね、増山くん」「あ、まっすぅでいいです。宜しくお願いします。」オサダは背が低くタイのキックボクサーのような体系をしている。オサダはドナの顔とドナの背負っているフェンダーのベースケースをチラッと見た。そしてオサダはドナに「よろしく」と言って拍手をしようと片手を出した。「あ・・、私、サポートで来たドナです。韓国の留学生です。ヨロシク」そう言ってドナはオサダの握手には答えず、ペコっと軽く会釈した。握手を拒んだドナは僕の方をみてニコっと笑った。僕はその笑いの意味が良くわからなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;遅れて愛車のモンキーをブンブン鳴らしながらギターケースを背負ったナオヤがやって来た。「あ、オサダさん、どうもどうもヨロシクです！あドナさんも来てくれてありがと！」ナオヤは自分が集めた新しいバンドに対して無邪気にワクワクしているように見えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;REDの受付でドナは会員証を作った。初めて入る日本のスタジオにドナは興奮していた。マーシャルのギターアンプ、アンペグのベースアンプ、ボーズのスピーカー、それにヤマハのドラム、ドナはその全てを触り、素直に感激していた。そんなドナにオサダは「ドナさん、ドラムは叩いたことある？ちょっと叩いてみなよ」と使い古した自分のスティックをドナに差し出した。オサダはドナに好意があるように見えた。オサダにスティックを差し出されたドナは「・・いい」と冷たく言って自分のベースの用意を始めた。ドナはオサダを好きになれないように見えた。オサダはどちらかと言えば清潔な美男子だが、女性が男性に対して、さしたる理由がなくても本能的に避けたくなることはよくある。ドナは本能的にオサダを、避けるべき人間だと判断していたのではないか。さっきスタジオREDの前でオサダの握手を拒否した後、僕に笑ってみせたとき（こいつ、なんか嫌～い）と心の中で僕に言って苦笑いしていたのかもしれない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;オサダとドナの微妙な距離感で、早くもこのメンバーに不穏な空気が漂い始めていた。その空気を察したナオヤがいつものようにバンドを仕切りだした。「とりあえず何か音合わそうか。え～と、じゃあ・・え～と・・何がいいかなまっすぅ？」「えっ？俺に聞いた？ええ～、んじゃ、ジョニーBグッドでも」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;意外なことに、このギクシャクしたメンバーがやるジョニーBグッドは最高だった。ドナのベースも個性的だったし、オサダのドラムもみんなをまとめていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;問題はその後やったオリジナルだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ナオヤは前もってオサダとドナにサピエンスで作ったオリジナルのデモテープを渡していた。そのデモテープの中でドラムを叩いているのは杉山だし、ベースを弾いているのはカズノリだ。ドナはテープの中のカズノリの作ったベースラインに忠実に弾いてくれたが、オサダは杉山のドラムをかなりいじり直してきていた。メンバーが変わったのだから当然、演奏も変わる。それはいいのだが、オサダの独裁的なワンマンにはそれまであった楽しさを削ぐものに思えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ナオヤくぅん、もっと音をはずませてよ！アンプだけじゃなくてエフェクター使って。色がないんだよ、色が」「ドナさんも、ルートばかりドドドってやってないで、もっとベースの展開を気にして。ベースのメロディー、わかる？メロディー」「増山くんもだよ！？サビもAメロも同じ歌い方じゃないか。もっと盛り上げるようにさ。ずっと棒歌いじゃないか」べつに今までのサピエンスでもそういった意見の飛ばし合いというのはよくあったのだが、オサダが一人威張り散らして指図していると気分が悪かった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;それでも僕とナオヤは「まぁ、そういうやり方もありますが」という前提でオサダと意見をかわしながら演っていた。しかし、誰よりも先にイライラの頂点に達してしまったのはドナだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナはいつか僕に韓国の社会的な習慣を話してくれたことがあった。それは、韓国では、年上の人間を非常に尊重する、という事だ。そんな習慣で育ったドナが自分より一つ年上のオサダにこう言った、「あのね、あなた二人の顔みてごらん。つまんなそうでしょ、楽しくなさそうでしょ、なぜか？あなたの指摘が的外れだから。テキカクじゃない。わかる？私の日本語」突然冗舌に説教しだしたドナにオサダは目を丸めて「あ、はい・・」と情けない声で答えた。そしてドナは続けた、「良いものを作りたいという、あなたの気持ちは正しいよ、でも方法が違う思わない？まっすぅやナオヤくんが作った曲は凄くシンプルです。素朴って言うのかな。例えば日本料理。韓国料理や中国料理みたいにたくさんの調味料使わない方がいいの、味付けは塩だけとか、醤油だけとか、そういうものだと思う、二人の作った曲はそういうもの。わかる？そっちの方がおいしいの。二人ともそれを知ってる、だからあなたの指摘はつまらない事なの」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナの言葉にオサダばかりか僕もナオヤも聞き入ってしまった。そしてその時、僕もナオヤも頭の中で、ある2つの共通の決断をしていた。オサダには辞めてもらおうということと、ドナを正式なメンバーにしよう、ということだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;この夜、夏の魔法はそれまで眠っていた巨大な天使を目覚めさせた。その天使は世界で一番美しいベーシストだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_03eb.html&quot;&gt;第32話　吉野屋北千住店にて&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-11-14T00:12:30+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_7262.html">
<title>第30話　新たな機関車</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_7262.html</link>
<description>横浜でのライブを最後に僕らのバンド、サピエンスは分解してしまった。夏休みのはじめ...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;横浜でのライブを最後に僕らのバンド、サピエンスは分解してしまった。夏休みのはじめ頃、ナオヤとカズノリと杉山で決めたことだった。僕だけが誰からも何も聞かされていなかった。僕もサピエンスのメンバーだ、急に「はい、今日でメンバー解散」と言われて納得できるほどの他人事ではなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ナオヤには考えがあった。前にユーコトロピアという地元のライブハウスの支配人、ジェリーから「改革が必要だ」と言われ、それからナオヤはずっとメンバーの入れ替えを計画していたのだ。ナオヤは僕の性格をよく知っている。新しいバンドの形がちゃんとできた段階ではないと僕が「バンドなんてやめてやる！キー！」と言いだすのではないかと心配していたのだ。実際、横浜ライブの打ち上げで僕はずっと一人ですねていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ベースのカズノリは同じ足立区の淵江高校軽音学部キャンデイ・ブロックスという人気バンドに加入した。サピエンスとキャンデイ・ブロークスはスタジオREDや地元のライブハウスでも何度か顔を合わせた事があり、お互いをよく知っている。キャンデイ・ブロークスのボーカルでもありバンドリーダーの小川という奴はカズノリのベースを気に入っていて、メンバー入れ替えを考えていたナオヤはその話をカズノリに持ちかけた。こうしてサピエンスからベーシストが一人移動した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そしてドラムの杉山はフォーティーファイブというハードコア系の大学生バンドに加入した。その経緯はカズノリと同じで、さらに実力、人気ともにサピエンスとは比べものにならないくらいほどレベルの高いバンドから誘いがあったのだから、サピエンスの中で最もプロ思考の杉山にとってもいい話だったのだろう。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そしてナオヤはボーカルの僕だけを残して新しいメンバーを探した。ドラムには青地高校の3個上の先輩でS☆GOという足立区でも伝説となっていた人気バンドの元ドラマーで、今はバンドを辞めてフラフラしていたオサダという人を口説き落としていて、オサダはすでに新生サピエンスへの加入が決まっていた。僕は中学生の時に地元のライブハウスを出入りしていて、そのときS☆GOのライブも何度か観ていたのでオサダのことは知っていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ベースはどうすんの？」僕はナオヤに聞いた。「ベースはまだ決まっていない。候補はあるけど交渉中」「誰よ？」「俺の地元の先輩とか、あと、西高にもいいベースがいるんだ。」「じゃぁ、ベースが決まるまで練習もライブもなし？」「まぁ、正式メンバーは慎重に決めなきゃいけないけど、サポートだったらやってくれる人はいるよ」「あぁ、サポートねぇ・・・ねぇナオヤ、俺はただみんなで楽しくライブができればいいんだ。それにサポートも正式も関係ないと思うんだけど」「じゃぁ、まっすぅはメンバーは誰でもいいっていうの？」「こだわりはないよ。楽しくできれば」「じゃぁ、サポートは素人の女ベーシストだけど、いいよな？」「えぇ～、なんでそうなるの・・・、別に掛け持ちでやってくれる人くらいいくらでもいるだろ～。女はいいけど、素人じゃサポートにならないじゃないか、それで今までより楽しいライブができると思うのか、ナオヤは」「いや、むしろあの子が入ってくれれば今までにない雰囲気ができると思うよ」「それって俺、知ってる人？」「おう、むしろまっすぅの方がよく知ってるよ」「・・・？え？誰？」「ドナさん」「・・・は？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/31_4bb2.html&quot;&gt;第31話　夏の魔法&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

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<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-11-10T18:39:29+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/29_4514.html">
<title>第29話　横浜の夜、最後の夜</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/29_4514.html</link>
<description>その日、横浜BBストリートでのライブイベント、１組目のヘビメタ風のバンドのギター...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;その日、横浜BBストリートでのライブイベント、１組目のヘビメタ風のバンドのギターは曲中にパフォーマンスなのか何なのか、アンプに蹴りをいれ、ドラムはシンバルスタンドをなぎ倒し、ボーカルはマイクをブンブン回し壁にゴツンゴツンあてていた。その日の夜はそんなバンドで幕を明けた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そのバンドが２曲目を終えたときライブハウスのスタッフがステージに駆け寄り何やらバンドともめていた。「契約違反だ！注意事項読んでないのか！」スタッフのそんな怒鳴り声が聞こえてきた。「そんなもんいちいち読んでるバンドなんていねぇよ」その光景を見ていたナオヤがボソッと独り言をつぶやいていた。「やめさせるなー！続けろー！」オーディエンスの中の誰かがでかい声で言った。負けじとカズノリがドスのきいたあの太い声で言った「おい、ジミヘンなんかな、ギターに火つけて演奏すんだぞ！」ホールに笑いが起きた。オーディエンスはみんなバンドの中止に抗議していた。僕はおもしろくてそれをずっと見ていた。隣でビールを飲んでいたドナは興味なさそうな顔をして小さな声でこう言った「やるならやればいいのに、やらないならやめればいい」。スタッフとバンドのやり取りはしばらく続いた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;気付いたころには何故かホールに「ジ～ミ～ヘン！ハイっ！ジ～ミ～ヘン！」というジミヘンコールが自然発生していた。「アハハ！ジミヘンコールは違うだろ～」僕はそう言って笑いドナを見た。でもドナはイライラしているように見えた。ハプニングの張本人でもあるそのバンドのメンバーも突然の意味不明なジミヘンコールに困惑していた。ステージのボーカルマイクから「・・・じゃぁ、そういうことで」というメンバーの声が聞こえた。そしてスタッフがオーディエンスに向けて一言言った「え～、契約違反ということで、演奏は中止しま～す、すいませ～ん、次のバンドは準備お願いしま～す」いっせいに「ブーーーーー！！！」というありきたりなブーイングが起きた。客層は僕らと同年代の頭の悪そうな若者と、成り行きで来ちゃった感じのサラリーマン達と、ひょんな事からドナにチケットを買わされてしまった韓国人観光客の団体がいた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ステージの上では威勢の良かったその１組目のバンドメンバーも、すっかりしょんぼりしていた。かわいそうに、この日の為にスタジオに通い一生懸命練習をしていただろう。でも、演奏中止に易々と同意したそのバンドはしょせん偽者ロックバンドということだ。機材損傷の代償金を見逃すか、代償金を払って演奏を続けるか、というライブハウス側の選択に、彼らは中止を決めてしまった。ロッンローラーなら借金をしてでもライブをやめてはいけない。僕はそう思った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;かわいそうなのは、２組目のバンドだ。予定より出演時間が早まるわ、会場は異様な空気になっているわで。そんな不幸な運命にステージにたたなきゃいけなくなったバンドは、僕らの後輩のガールズバンド「ポップコーンポップ」達だ。でも、逆に、ポップコーンポップが２組目で皆が救われた。殺気だった空気も彼女達がステージに上がると会場から「かわいい～！」という声が上がった。僕もナオヤもカズノリも杉山も先輩として鼻が高い思いだった。だって、自分達の後輩がこのホール中の空気を癒したのだもの。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ポップコーンポップのライブは本当にキュートだった。イチゴちゃんのかわいいシャウトに会場が盛り上がった。「お気に入りのポップコ～ン♪ピンク色のポップコ～ン」。イチゴちゃんの書く詩は実に奇妙だ。ナオヤと僕はコピーばかりしていた彼女達に「オリジナルをやれ」と彼女達の為に曲を提供していた。それにイチゴちゃんが詩を書いたのだが、イチゴちゃんの詩は「ミッキーマウスがツンツルテン」とか「少女がスイカになっちゃった」とかとにかくわけがわからないものばかりだが、それが彼女達のかわいさを際立てた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ポップコーンポップの持ち時間の終了時間が迫る頃、僕らはステージ裏で出番の準備をしていた。ポップコーンポップの次の本日３組目が僕らザ・サピエンスだった。僕はいつものように体をくねくね動かし、緊張をコントロールしていた。ステージではポップコーンポップのライブが終わった。会場が拍手と歓声と口笛で彼女達を包んでいた。さぁ行こう、とした時にナオヤはカズノリと杉山に握手していた。何しているんだ？とうい顔で僕は３人を見た。するとカズノリと杉山も僕に握手をしようとしてきた。「今までありがとうな、まっすぅ！」カズノリがそう言った。「俺とカズノリは今日がサピエンス最後なんだ。目一杯やってやろうな」杉山がそう言った。「え？」僕はわけがわからずナオヤを見た。ナオヤは僕の顔をみて笑った。「だから、まっすぅには最後まで言うなって言ったんだよ。すぐ動揺すんだもん」そんな・・・なんでだよ・・・なんでカズノリと杉山は抜けちゃうんだ、なんでこんな時になってそんなこと言うんだよ・・・僕はナオヤの言うとおり動揺してしまっていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その日は本当にこのメンバーでやる最後のライブになった。事情はまだわからなかった。というよりも、理由なんて聞けなかった。ああだ、こうだ言っている時間などなく、僕らはポップコーンポップに続いてステージへすぐに上がっていった。その日のカズノリのベースも杉山のドラムもいつもよりも力が入っていて完璧だった。それはナオヤも僕も同じで、いつものライブよりも一曲一曲をかみ締めるように演った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_7262.html&quot;&gt;&lt;u&gt;&lt;span style=&quot;color: #9b8d82;&quot;&gt;第30話　新たな機関車&lt;/span&gt;&lt;/u&gt;&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-11-07T17:56:46+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/28_52b7.html">
<title>第28話　横浜の昼下がり</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/28_52b7.html</link>
<description>ライブハウスでライブをするにはノルマというものがある。だいたい10枚から20枚ほ...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;ライブハウスでライブをするにはノルマというものがある。だいたい10枚から20枚ほどのチケットを自分達で売りさばかなければならない。売れ残った分は当然自腹で払うことになる。つまり赤字だ。また、ノルマ以上のチケット代はそのまま収入になるが、僕らにとって、この夏休みで一番大きなライブでもある「横浜BBストリート」でのライブには、今までの最高となる２５枚のノルマが課せられていた。一緒に出演するポップコーンポップという後輩のギャルバンはすでにノルマを達成していたというのに、情けないことに先輩の僕らは当日になってもまだ10枚ほど余りがあった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;この日、各自バラバラで横浜入りしていた。僕は昼間からドナと横浜に来ていた。昨日、「チケットが余っちゃってるんだ」とドナに相談したが、ドナの留学生友達はこの時期みんな国に帰っていて、つてがない。余ったら余ったで、その分お金を払えば済む話なのだが、やはりチケットが余るというのは出演者として気分のいいものではない。地元でのライブならばどうにか売れるのだが、横浜となると距離もあり、なかなか買ってくれる知り合いが見つけられなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は半ば途方にくれながら昼間の横浜をドナと一緒に歩いた。僕らは「ブルーブルー」という僕のお気に入りの洋服屋に行った。港に面していて、舟をイメージした非常におしゃれな店だ。店内にはアメリカンカントリーがのんきに流れていて、世間では夏休みだというのに客は僕とドナだけだった。僕は舟の碇マークが刺繍された薄手のニットキャップを買った。その後、中華街の南門近くのチャイニーズカフェで、中国茶を２人で飲んだ。苦味と甘みが交じり合ったような妙な味のそのお茶をドナは「うまい、うまい」とガブガブ飲んでいたが、僕にはその味覚が理解できなかった。中華街を出て、横浜の街をフラフラとした。この辺りの建物は歴史が古く、大正時代から残されたヨーロッパ調レンガ造りの美しいビルを２人で眺めてながら歩いた。「赤い靴～は～てた～女の子～異人さんに連れられて～行っちゃった～」という横浜の歌をドナに教えた。ドナは「異人さん」という日本語がわからなかったみたいだ。「え？ひいじいさん？良いじいさん？どんなじいさん？」「いや、じいさんの歌じゃないよ」僕らはそんな何でもない会話をしていた。その後、横浜港に行き、マリンタワーに登った。マリンタワーの展望台からベイブリッジやみなとみらい21地区の美しい景観を眺めながら僕らは子供のようにキャッキャ、キャッキャとはしゃいだ。まだ昼間だが、夜になればそこからの眺めはさぞかし夜景が綺麗だろなと僕は思った。考えてみれば、僕は今、ドナとデートをしているのではないか、僕らは他人から見ればカップルに見えるだろうか、そんな風に思うと急にドキドキして、何だか無邪気にはしゃげなくなった。昼の時間にドナとこんなに一緒にどこかに行くなんて事はなかった。マリンタワーには横浜の美しい夜景の写真が印刷された絵葉書がたくさん売られていた。こんな夜景をドナと二人で観たら僕らはどんな会話をするだろうか。おそらく、僕もドナも何の言葉もなくなるだろう。あと５分で世界が終わるという時、僕は何をするだろう、100人の美女に囲まれてSEXをするだろうか、世界中のうまいものをたらふく食べるだろうか、あと５分で世界が終わるという時きっと僕はあの絵葉書のような夜景をドナと手を握りながら眺めるだろう。その時、きっと二人とも一言も言葉を交わすことはない。僕はしばらくそんな事を考えながら、展望台のベンチから昼間の横浜の景観に見とれていた。となりに座り、景色を眺めているドナはベイブリッジでもなく、みなとみらいでもなく、もっともっと遠くを眺めているように見えた。ドナはそんなような瞳を持っている。僕はドナの目が好きだ。愛しさに満ちた世界で一番美しい目だ。その目で彼女はこの先いったいどんな世界を見るのだろう、その世界に僕はいるだろうか。それはわかならい。それでも、今こうしてドナといられる、ただそのことだけで僕ははち切れんばかりの幸せを感じていた。ドナがボーっと景色を眺めて、一言も喋らなくなったので、僕はドナに言った「ドナの故郷も港町でしょ。」「うん。でもインチョンは横浜みたいに綺麗じゃないよ。本当に汚いの。ゴミがたくさん。空気も悪い。インチョンもいつかこんな美しい街になるといいな」きっとドナはここから遠く、韓国のインチョンの街を眺めていたのかもしれない。僕には見えないその景色にどんな思いをはせているのか、やっぱりそれも僕にはわからない事だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕らはマリンタワーを降り、山下公園を散歩した。僕は余ったチケットのことを思い出した。でも、もうどうしようもない事だ。僕らが余った分のお金を払うしかない。そんな事を思っていると、僕の心を読んだのか、ドナが「チケット売ろうか」と言った。「え？どうやって？横浜に知り合いでもいるの？」「世界中の人が知り合いだよ」とわけのわからない事を言って、さっきから山下公園の中でもでもひときわ騒がしい外国人観光客の団体のもとへスタスタと向かい歩き出した。アジア系のその観光客は、韓国人だろうか、ドナとハングルでペラペラと会話をしている。「どうしたの、ドナ？彼ら誰？」僕がそう言うとドナは「今、知り合ったのよ、私、彼らが韓国人だってすぐわかったもん。」観光客は８人の団体で、みんな日本人とは少し違うファッションで、写真を撮ったり、ダンスをしたりしていた。ドナが「彼らを一緒に観光案内してあげましょ」と急に言い出した。僕はすぐにドナの考えがわかった。彼らと仲良くなってチケットを買ってもらおうという事だろう。ドナはすぐに観光人観光客の団体と仲良くなった。が、僕はその輪の中に入れなかった。８人の外人の団体は迫力がある。ドナは平気だが、僕はちょっと恐い。ドナが通訳となって、やっと彼らのリーダーみたいな中年の男性に話しかけた。「いつから日本に来てるの？」僕がそう言うとドナが中年男にハングルで話した。中年男がドナと僕を交互にみながらハングルで何やら喋り、最後に僕に握手をしてきた。それをドナが日本語で僕に伝える。「昨日、来たばかりだって。観光案内をしてくれるなんて嬉しいよ～はい握手～、だって」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナの奇妙な行動で、僕は男女８人の団体観光客の観光案内をすることになった。それにしても韓国人というのはどうしてこうもみんな同じ顔なのだろう、と思った。目はみんな一重でつり上がっていて唇が薄いく、顔は四角い。僕は彼らの顔を見ていると、ドナが本当に韓国人なのか疑いたくなった。本当は韓国語を喋れる日本人ではないだろうか。だって、ドナの目は二重で大きく、ぷりっとした唇で、本当にかわいい顔をしているのだもの。それに、ドナは彼らみたいにやたらとでかい声で喋らないし、彼らより何倍も落ち着きがある。韓国人の団体に混じるとドナだけが浮いて見えた。男女８人の団体観光客は、一緒に歩いていると途中で必ず何人かいなくなる。それで「どこいった？」みたいになり、はぐれた何人かはしばらくすると戻ってくる。そんな彼らと歩くと、なかなか目的地にたどり着けず、疲れる。僕とドナが最初に案内したのは「ブルーブルー」だ。ドナが「横浜で一番おしゃれな店」とでも適当に言ったのだろうか。野球のホームベースのような顔をした韓国人の男は、「これいいね」というような事を言って、あるニットキャップを気に入り、レジで買っていた。ホームベース男は満足げな笑みを浮かべて、今買ったばかりのニットキャップを被った。そのニットキャップには舟の碇マークが刺繍されていた。僕のカバンの中にはさっき買ったばかりのまったく同じニットキャップが入っているが、「しばらく被ることはないだろう」ホームベース男の笑顔を見て、僕はそう決めた。その後、彼らを連れてきたのは、中華街の南門近くのチャイニーズカフェだ。そこで中国茶をみんなで飲んだ。僕も飲んだ、が、やっぱりマズイ。韓国人たちはみんな「マッシタ、マッシタ（うまい、うまい）」と言っていた。そして、その後、大正時代から残されたヨーロッパ調レンガ造りの美しいビルを眺めに行った。そこでドナは韓国人たちに「赤い靴はいてた女の子」の歌を歌って教えた。しかしドナはやっぱり「異人さん」ではなく、「おじいいさん」と言って歌っていた。そして最後にマリンタワーを案内した。そこでドナはチケットの話を彼らにした。普通ならただの「たかり」だと思われるとこころだが、ドナの人柄の良さからか、彼らはみんな興味津々でチケットを買ってくれた。僕を指差し、「この人が歌うよ」と、そんな風なことをドナがみんなに言うと、みんな「わぁぁぁ」とか言って僕に拍手をしだした。僕はまだ何もしてないのに突然拍手をされ「どうも、どうも」とペコペコしてしまった。とにかく、チケットを買ってもらったので良しとした。彼らもきっと楽しんでくれるはずだ。そして、楽しませる自信もあった。それにしても、この日はドナの意外な姿を見たような気がした。ドナの勇気というか、根性というか、行動力は驚かされた。しかも、困っている僕の為にしてくれたことが、なによりも嬉しかった。こんな気分のときはみんなを楽しませるライブをする自信がわいてくるのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/29_4514.html&quot;&gt;第29話　横浜の夜、最後の夜&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-10-31T19:46:49+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/27_ea34.html">
<title>第27話　不思議な予感</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/27_ea34.html</link>
<description>そして、調子に乗った僕はもう一度キスをしてやろうとしたところ、思いっきり嫌な顔で...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;そして、調子に乗った僕はもう一度キスをしてやろうとしたところ、思いっきり嫌な顔でにらまれた。最近覚えた日本語だろうか、片言で「チョウシニ、ノルナ」と言われ、僕の顔はみるみる真っ赤になってしまい、しょんぼりとした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;時間になり、２人で部屋を出ると、僕はカウンターにいたマリちゃんの顔を見ることができなかった。その後、いつものように僕はドナと『幸せ街道 100万号線』を歩きながら、どうしても気になることを聞いた。「ねぇ、ドナ、今日言ってたさ、秘密っていうのを教えてくれよ」ナオヤが今日、カラオケスタジオまでドナに会いに来た事だ。「え？あぁ、でもね、まっすぅにはまだ言わないで、って・・・秘密は守らなきゃ。でしょ？」「・・・キスした仲じゃないか～、秘密なんて必要ないよ」ドナは思い出したのか、ハハハと笑った。僕にとってドナとのキスは笑い事じゃないのだけど、ドナは何故かおもしろいしい。「ハハハ、それは関係ない」ドナはそう言うが、ナオヤとの密会と、僕とのキスは関係ないなんて思えなかった。この感じは何だ。この感じは嫉妬っていうやつだ。でも本当は嫉妬などする必要はない筈だ。僕はドナとついにキスまでしてしまったのだから、他の男に嫉妬するなんておかしな話なのだろう。「わかったよ、じゃぁ、俺は直接にナオヤから聞き出してやるんだ、いいね？」何だか自分が嫌な女みたいな性格になっている気がした。「いいよ、それならばいい。ノープログレム」ドナはそう言った。「じゃぁ、俺とドナの間にも秘密を決めよう」「え？何？」「キスしたって事。これ秘密ね」「アハハハ、OK。アハハ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナと別れ、早速ナオヤに電話してやろうと思っていたが、結局その日、ナオヤに電話することはなかった。正直なところ、僕の心の中はそんなことより、ドナとのキスのことでいっぱいだった。ニヤニヤしていたし、足元はフラフラしていて、自転車が右へ左へとくねくねしていた。そうして交番の前をゆっくりと通ると、当然、お巡りさんがダッシュで僕を捕まえて「おい、ヘンなもんやってるんじゃないか？」と職務質問してきた。「お巡りさん、俺にだってニヤニヤしちゃうときっていうのがあるんだよ。素敵な余韻に浸ってるんだから邪魔しないでくれ」そういって立ち去ろうとしたが、「ちょっとちょっと」と言ってお巡りは僕を止めた。「ごめんね、でも持ち物だけ見せてもらっていいか？」ウッセーなこいつ、と小さく呟いて、大人しくポケットに入ってるものを見せた。「ほら、財布でしょ、ギターのピックでしょ、携帯でしょ、飴ちゃんでしょ、タバコでしょ、そしてライター・・・・ん？あ、タバコはダメ？」「うん、高校生でしょ、君。タバコはダメだね、ハイ、目の前で処分して。」いつもはタバコなんて持ってないのに、たまたまこの日、タバコを買っていた。でも別にもう吸いたくなかったので、言われたとおりお巡りの目の前で一本一本折ってみせた。タバコを折るとき僕は花占いのように「好き～。嫌～い。好き～。嫌～い」とふざけてみせた。20本入りのタバコを一本だけ吸ったので、残り19本のタバコは「好き」で終わった。「ほら、お巡りさん見て！やっぱり彼女、俺のこと好きなんだよ！」僕がそう言うと、お巡りは呆れたという顔で、「青春だな、君。まぁ、もう夜遅いからまっすぐ家に帰りなさい。タバコはもうダメだぞ。」そう言って去って行った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;もうすぐ、僕らにとって、この夏休み最大のイベントでもある横浜でのライブを間近にしていたのだが、僕の気持ちはドナのことと、ある不思議な予感でいっぱいになっていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナとの関係も、バンドも、全てのことが変わりそうな気がした。何かが最高の方向へ向かい始めているのを、不思議だが、僕はこの夜に実感していた。今以上にワクワクしてドキドキする未来が、僕の前にいて手を振っている、そんな気がしたのだ。なんでだろう。生まれ変わるような高揚感に満ちていた。とても不思議な予感だった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その予感が現実のものになるのは、横浜のライブを終えてからのことだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/28_52b7.html&quot;&gt;第28話　横浜の昼下がり&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-10-28T16:57:06+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_6aac.html">
<title>第26話　メロンソーダの味</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_6aac.html</link>
<description>僕はドナの唇に触れそうになった。そして、まるで火に触れたかのように僕の身体が反応...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;僕はドナの唇に触れそうになった。そして、まるで火に触れたかのように僕の身体が反応して瞬間的に顔を離した。とっさの事だった。ドナは驚いたような顔をしていた。何が起きたのかまだ頭が把握しきれてないときに人は、ああいう顔をする。それは僕も同じで、何が起きたのかわからず、やはり驚いた顔をしていただろう。その時、限りなく静止状態に近いスローモーションな時間を感じた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;なんてこった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は自分の唇に冷たさと甘い香りを感じた。ドナの顔のギリギリのところで僕は離れたつもりだが、やっぱり唇に触れた感触がある。冷たさと甘さだ。それは氷の入ったメロンソーダの冷たさと甘さだ。ドナが飲んでいたメロンソーダの冷たさと甘さだ。ドナが飲んで、唇に濡れていたメロンソーダの冷たさと甘さだ。一瞬よりも短い時間、僕はドナにキスをしてしまったのだ。「キャー変態！なにすんだよ！きもちわりぃ！調子のんなよ！クソガキが！イゴチョッパリガ（クソ日本人め）！死ね！ペッペ、あぁきたねぇ！クソ日本人め（イゴチョッパリガ）！ペッペッ」と言われるかと思ったが、ドナはそんなこと言わなかった。とんだ事故の被害者ドナは、ただでさえ大きなその目を、さらに大きくし「・・・ノラスムニダ・・・びっくりした」と呟いた。僕は下を向きながら、小さな声で言った「あの・・ごめん。間違えて（何を間違えたんだ？）・・ってか違くてさ（なにが違うんだ）違うって言うか、なんていうか、ドナの顔に何か付いてて、気になってよく見たくて（苦しい、苦しすぎる、そんな言い訳は）というのはもちろん冗談で（何言ってるんだ、俺）歌のパフォーマンスっていうか（そんなパフォーマンス聞いたことない）、ほら、ヨーロッパ風の挨拶っていうか（ここは日本で、俺は日本人だ）、まぁ、簡単に言うとドッキリみたいなもんで（あぁ、もう何言ってるんだ俺、だ～いせいこ～とでもやればいいのか？）あ、おいしそうなメロンソーダだ（関係ないこと言っちゃった）俺はコーラが好きだよ（今、関係ないだろが！）そうさ！（やばい、俺が暴走してる）俺は、お前の口に付いたメロンソーダがどんな味かと思ったのさ！（キマった）」いや、ちっともキマってなんてかいない。カラオケのマイクを片手に立っているんだか座っているんだかよくわからい体勢で僕は惨めな生き物と化していた。ドナはメロンソーダをまた一口飲んで、クスっと笑って、その笑顔のままで何も言わない。思わず僕もコーラを飲んで、「まぁ、その・・」と僕はまた喋りだした。スピーカーからは「キスして欲しい」のカラオケが虚しく流れっぱなしになっている。エアコンがあまり効いていないのか、部屋中が暑い。「まぁ、その・・、あれだよ・・・落ち着こう（俺がな）とりあえず冷静に（俺がな）・・俺は決して・・・どう言えばいいのかな・・・俺は決してそういうつもりでね・・そういうつもりっていうのは、なんて言うか・・（もう諦めようぜ、俺、何言ってもかっこわるいよ）いやいや、ドナさん、笑ってないで、何か言ってくれよ・・・いや、言わなくていいんだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・（え？）・・・・・・・・・・・・・・（何で？何で？何が起きた？）・・・・・」その時、自分に何が起きたのかわからなかった。僕のほっぺを包むように手が伸びてきて、その手に顔を抑えられたまま、僕の前にドナの顔がある、氷の冷たさ、メロンソーダの甘さ。僕とドナの唇がくっついていた。なんてこったパート２。僕はドナにキスをされた。事故なんかじゃない、あきらかな彼女の故意のキスだ。（でも何でこんなことが起きているのだ？僕をからかっているのか？何か言ってくれ、いや、言わないでいい・・・このままでいてくれ・・・）また時間がスローモーションになった。ドナからのキスも一瞬だった。でも永遠だった。スピーカーでは「キスして欲しい」がまだ流れている。最後のほう、「オーイエーイ」というカラオケのバックコーラスが聞こえた。よくわからないが、そこだけ僕は心の中で歌った「オーイエーイ」と。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドナは顔を離してから、目を細めて、微笑んでいた。そして、小さな声で「しかえし」と言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ドナ・・・・メロンソーダをありがとう」「・・・コーラをカムサムニダ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/27_ea34.html&quot;&gt;第27話　不思議な予感&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-10-24T19:52:02+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/25_a418.html">
<title>第25話　トゥー・トゥー・トゥー</title>
<link>http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/25_a418.html</link>
<description>（ねぇ、まっすぅ、何をそんなに悩んでいるの？）え、いや、別に悩んでいるとかじゃな...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;（ねぇ、まっすぅ、何をそんなに悩んでいるの？）え、いや、別に悩んでいるとかじゃないんだけどさ、何て言うか、俺、すごく好きなのだよ、あの女のこと。（恋ってやつだね）恋だか愛だか知らないけど、うん、あんな女、どこにもいないような気がするよ、俺にはそう思う。（美恵ちゃん？）いや、美恵ちゃんじゃないんだ、美恵ちゃんはすごくいい子だし、こんな俺でもちゃんと好きでいてくれる、でも、美恵ちゃんじゃないんだ、美恵ちゃんは恋人だけど、二人の恋はとても中途半端に思えるんだ、美恵ちゃんじゃない、美恵ちゃんじゃないんだ。（やっぱりあの韓国人の子だね）うん、そうなんだ（じゃぁ、その子にさっさと好きだといって、美恵ちゃんとは別れるべきだよ）好きだなんて言えないよ、それになんか、そんな事言わなくてもいいような気がする。（なんで?）なんでだろ、恥ずかしいとか、振られるのが恐いとか、そういうことじゃないんだけど、言いたくないな、好きだとかなんだとか。（じゃぁ、美恵ちゃんと別れないの？）何度も別れ話をしようとしたよ、だけどいつも言えないんだ、美恵ちゃんの優しい目が言わせないみたいな。（美恵ちゃんも気付いているのかもしれないよ）え？（美恵ちゃんとはもうすぐで付き合って１年が経つだろ？1年も一緒にいる男のことなんて女はわかるんだよ、勘でね、女の勘ってすごいんだよ）じゃぁ、俺が他の女のことが好きになったってことを勘でなんとなくわかっているのに、美恵ちゃんはあえて俺にそのことを問い詰めたりしないってこと？（そういうことだね）そうだとしたら余計に俺は苦しいじゃないか（とにかく、まっすぅが、あの子に好きだと言わなければ、何も始まらないし、何も終わらないと思うよ）&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;っという夢から覚めるともうすっかり夕方だった。時計を見ると午後の７時になろうとしていた。「しまった！」と思い慌てて携帯を掴んだ、画面にはナオヤからの着信履歴でいっぱいだった。この日は４時からスタジオ練習でREDに集合することになっていた。横浜のライブが近かったのだ。４時から７時の３時間で新曲をなんとか完成させるつもりだった。昼近くにロバート・ジョンソンのCDを買いに行き、家で聴いていた、だがいつの間にか眠りに落ちてしまい、気がつけばスタジオ練習終了時間に目が覚めたのだ。僕は慌ててナオヤに電話をかけた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;もう練習終わったよ、何でお前はそんなに怠けものなんだ、頼むからしっかりしてくれ、ばぁぁぁか・・・・。ナオヤの暴言に寝起きの僕の心は傷ついた。ごめん、としか言えなかった。僕は自分のやることなすこと全部が中途半端に思えた。バンドだけは本気になっていたが、今の僕はそれさえも別のものに心を奪われかけていた。ドナだ。ドナに出会ってから、僕はどこかフワフワしていて、どこの地にも足を着けられずにいた。みんなごめん・・、なにか泣きそうな気持ちになった。夕方に目が覚めて、まして、家が静まり返っていたときは、よくこうやって一人感傷的な気分になることがある。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;メンバーにちゃんと謝ろうと思った。練習終わりだから、きっといつものファミレスにいるに違いない。僕は自転車をこいだ。電話をしよう。いや、やっぱりやめよう。みんなに謝りに行くのもやめよう。こんな中途半端な態度は、逆にみんなからヒンシュクをかうだけだ。なんか全部が面倒くさく思えた。誰かの家に行ってマリファナでもご馳走になろうか。やめよう、くだらない。僕は自転車をただただこいだ、夕日は沈み、空はもう夜になろうとしていた。僕は中学生の頃以来、久しぶりにタバコを買った。たまに人から貰って吸ったりはしていたが、自分でタバコを買うのは、高校生になってから初めてのことだった。通りすがりのサラリーマンに火を借り、マルボロに火をつけて、プカプカと吹かしながら自転車を走らせた。五反野駅付近のネオンは雑居としていて、派手でもなく地味でもなく、なんとなく心が落ち着いたが、相変わらず気分は晴れないままでいた。こんな気分を和らげることのできる人は１人しかいるわけがなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕はドナに電話をかけた。僕はドナに電話をかけることなどめったになかった。僕はシャイなのだ・・。本当に用があり、今すぐ話さなければいけないことでも無い限り、僕はドナに電話なんてしなかったし、そもそも本当に用があり、今すぐ話さなければいけないことなど今までなかった。「ねぇ、ドナ、今どこにいるの？」「カラオケスタジオだよ。あ、韓国お土産あるよ、この前渡すの忘れちゃって、とりに来られる？」「もちろん、すぐ行くよ、今、五反野の駅前だからさ、30秒で着くよ！今日は誰と？」「今日はマリちゃんとだよ」誰？と電話の向こうでマリちゃんの声が聞こえた。「ドナ、あと３秒で着くよ！」と言って僕はカラオケスタジオの入り口ドアを元気よく開けた。「ギター貸して、今曲が思いついたんだ、忘れちゃいそうだからギター借りるよ」僕は店に入るなり、ロッカーからドナの重たいグレコを取り出し、ここに来るまで頭の中で流れた曲をコードを探しながら弾いた。[めんどくせぇ　めんどくせぇ　俺にかまうな　めんどくせぇ　ギルぜ　ギルぜ　アイアム　ギルティー　反逆者の発射台　血だらけの　俺はギルティー　わぁあああああ]勢いのあるいい加減な詞だったが、曲調はEｍのドンヨリしたものだった。なんだそりゃ、と言ってドナは笑い、うるせぇ！マリちゃんは言って、あれれ思ったより良くなかったなぁ、と僕は言った。「ハウス！」とマリちゃんが言ったので僕はグリコのギターをかかえながら大人しくいつものカラオケルームに向かった。部屋に入るとしばらくしてメロンソーダとコーラを持ってドナが入ってきた。「ドナ、今日はなんのCDも持ってきてないんだ」「いいのいいの」とドナは言った。「まっすぅ、何かあったでしょ、正直言いな」「え？なんで？」「いや、だって・・」「そこまで変だった？今の曲」「・・・はい！変！」そんなことを言って２人で笑った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「カラオケでもしよかな」僕がそう言いカラオケの歌本をペラペラとめくった。「めずらしいね、まっすぅカラオケなんて」とドナは言った。「ボーカルは練習を怠れないのさ」そんな僕の言葉にドナが笑って言った「今日、練習サボったのにね～」「え？何で知ってるの？」「今日、練習帰りにナオヤ君が来てね、言ってた。ダメじゃない。」僕のカラオケ本をめくる手が止まった。「ナオヤ？・・・なんでナオヤがドナに会いに来たんだ？」「・・・それは、秘密なのよ」ドナの持ってきた僕のコーラの入ったコップが水滴を垂らしている。僕はとても残酷な想像に支配された。ナオヤとドナの関係、どんな関係？ドナはナオヤが好き？ナオヤもドナが好き？２人で何も知らない僕を笑っている？僕は身体中の血液が抜かれる思いだった。なぜ秘密なんだ？なにが秘密なんだ？僕はドナに好かれているかもしれないと少し思っていた、そんな思いは妄想だった？勝手な僕の思い込み？僕はドナにその秘密とやらを問いただせなかった。何かを聞けば、何かを言えば、僕はますます惨めになるだけだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ふ～ん」そう一言だけ言って僕はカラオケ本を意味もなくめくった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;どれくらい時間が経っただろう、僕はカラオケ本をいつまでもぺらぺらしていた。ドナは黙ってベースを弾いている。何か、歌わないと・・そう思い、何となくブルーハーツの「キスしてほしい」を選曲した。ドナは「おう、これ弾ける、簡単」と言ってカラオケにあわせてベースを弾いた。僕は歌った。恥ずかしい歌だ。「教えてほしい　教えてほしい　教えてほしい　教えてほしい　終わることなど　あるのでしょうか　教えてほしい」僕の気持ちと同じだった。何かが終わるのが恐かった。ドナを好きでいることは、何をしても楽しめるということで、そうじゃなくなったら、それはただの虚しい世界に変わる。それならば教えてほしい、僕のこんな気持ちはいつ終わるのか。ドナは楽しそうだったが、僕は楽しくなかった。僕はまた「キスしてほしい」を選曲した。ドナはまたベースを弾いた。曲が終わるとまた何度も「キスしてほしい」を歌った。ドナは呆れたりしないし、飽きたりもしない。僕は無理に笑顔を作り歌う。ドナは自然な笑顔でベースを弾く。ドナは曲が終わる度に氷の入ったメロンソーダを口に含んで「簡単簡単」と自慢する。僕はお腹が痛くなってきたので、のどの力だけで歌う。キスしてほしい　キスしてほしい　キスしてほしい　キスしてほしい　二人が夢に近づくように　キスしてほしい。僕は、ナオヤが僕に黙ってコソコソとドナに会いに来ていた事を忘れようとしていた。頭の中がトランス状態になるまで、ずっと歌った。ドナは楽しそうだ。わけがわからない、何だこの状況は、僕達は何しているのだ、誰もそんな事を言う人はいない。ドナの心に誰が映っていようと、ここは二人だけの場所なのだ。誰かに嫉妬して、僕はドナに対する気持ちが沸点に達しつつあることに気づいた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;だからあの時、僕はドナの唇にキスをしてしまったのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;次号、「&lt;a class=&quot;link&quot; href=&quot;http://jion2.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_6aac.html&quot;&gt;第26話　メロンソーダの味&lt;/a&gt;」に続く・・・&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;a href=&quot;http://junmassuw.com/page021.html&quot; target=&quot;_blank&quot;&gt;&lt;span style=&quot;color: #0000ff;&quot;&gt;&lt;strong&gt;⇒目次をみる☆&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/a&gt; &lt;/p&gt;</content:encoded>



<dc:creator>増山</dc:creator>
<dc:date>2006-10-21T19:31:53+09:00</dc:date>
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